ミラーゲームとマンマークが炙り出す浦和の強さ

今更ながら広島戦雑感

完全なミラーゲームと浦和のマンマーク。
先制されても冷静さを失わない広島を見て単純に強いなと思った。たぶんあそこまで我慢強いチームはJにはいない。浦和がバックラインでボールを保持しても追わない。ヒリヒリするこの感じ、何かに似ている。それは大宮のオールコートマンマークとその中で無理にでもバックラインで回した浦和の意地の張り合いと同じように感じた。

水本が言っている通り、２点目で計算が狂ったのだろう。後半開始から逸る気持ちを抑えられず前掛かりになったところに止めを食らい試合は決まってしまった。

森保監督が特別悪くはなかったと言うのは本音だろう。では何がそこに優劣をつけたかというと個の力だ。この試合、両チームの決定機は驚くほど少ない。浦和は２点目と後半柏木が右足でふかしたシュート、広島は山岸がサイドを抜け出して高萩がシュートしたシーンぐらい。浦和の得点を振り返ると１点目は柏木のクロスの質と興梠の身体能力、２点目は広島DFをボールウォッチャーにした元気のドリブル、３点目は平川の抜かずに上げたクロスの精度と興梠の身体能力。興梠はアフリカンかと思った。３点目はあのタイミングを広島DFは予想していなかったのだろう。見ている方も驚いた。

森保監督は負け惜しみを言ったのではない。たぶんその意味は３失点したが組織は崩されてはいないと言いたかったのだと思う。２点目は崩されたがカウンターだし、１点目、３点目はどうしようもない、と言いたかったのだろう。組織では負けていないと。

確かにそれは間違っていない。もしロスタイムに１点返されなかったとしても、とても楽勝と言えた試合ではなかった。それは個人のスーパープレーがあったからこそ勝てたからだ。

ミラーゲームやマンマークが炙り出したのは「個の力」そのものだ。

広島の素晴らしい守備意識や簡単に崩れない組織が浦和のスーパープレーを生み出したのは言うまでもない。高いレベルの試合が良い選手を生み出すように。

試合後、疲れ果てた両チームの選手が互いの健闘を労う時、スタジアムに流れた静寂は９０分の緊張を解きほぐすかのようだった。こんな試合が観れるJリーグは捨てたもんじゃないと思う。この試合や大宮戦はスタジアムの空気を含め素晴らしいコンテンツになる魅力を備えているはずだ。

ろくに自国リーグも観ずに揶揄する輩は外貨稼ぎに必死な海外ビッグクラブが力の差をありありと見せ付ける華試合にならず、残念な気持ちだろう。僕からすれば、こんな面白い試合があるのに見てくれなくて残念だ。