偶発事象は、なぜ起きるのかは説明できない。だが偶発事象も積み重なれば、きわめて規則的な振る舞いをする。
サッカーは完全なゼロサムゲームではないが、ゼロサム方式ではある。
サッカーの勝敗が個別に独立したランダムな事象であれば、勝ち、負け、引き分けが33.33%になる。しかしサッカーの勝敗はランダムではない。勝者は敗者を生み、引き分けは引き分けを生む。全員勝つことも、全員負けることもないが、全員引き分けることはありえる。ゼロサムとは全ての総計が±0となるゲームである。サッカーは勝ち点が(W,D,L)=(3,1,0) となるため、総計の均衡点はゼロにならず、定まらない。定まらない理由はドローが無価値でない事と、勝ち(または負け)と引き分けの相関が存在しないからだ。勝つこと(負けること)と引き分けが1/2の確率で発生するなら、3つの確率は33%に近づくが実際にはそうならない。思ったよりも勝っている(負けている)のが実情だ。
以下はJリーグ、プレミア、リーガ、セリエAの勝敗確率である。リーグ全体での計算のため当然ながら勝ち数、負け数は同じになる。
リーグ別勝敗確率
Jリーグは公式データを使い算出。他3つのデータはウェブで得たデータのため信憑性が高いとは言えないが参考までに併記する。Jリーグの2003年からのデータを使う理由としては、延長戦をしなくなったからである。03年以前のデータもあるが延長やPKまで存在した年もあり、データが偏るため除外した。この後に使うデータも記載がない限り、03年からのデータである。
どのリーグも引き分けが勝ち負けに比べ少ない。塩試合が多いセリエでさえ30%はいかない。
続いて今年度のJ1勢による平均勝ち点数のグラフ。初昇格の松本はデータないので除外。
平均勝ち点グラフ
特筆すべきは鹿島。初年度からの公式データでみればもっと高い。常に優勝争いに関わっている印象だが、その印象に違わない数字である。レッズからするとライバル意識の強いチームであるが陣容が替わりながら20年Jリーグのトップを走る強豪であることは単純に凄い事で尊敬に値する。古豪のヴェルディや黄金期のジュビロなどJの歴史を彩るチームと違い、過去から現在に至るまで平均回帰に抗い驚くべき数値を残している。
他には2000年以降活躍しているガンバと浦和が良い数値である。両チームとも降格や降格危機があり、順風満帆とは言えないながらも現在のJ1勢の中では健闘している。両チームとも初年度からのデータを見れば数値は平凡になるだろう。
続いて浦和、鹿島、G大阪の勝敗率を紹介しよう。
勝敗率
続いて今年のJ1勢の平均得失点でデータある。これはクラブカラーが出るので面白い。
平均得失点
鹿島と浦和がそっくりだ。堅実に得点を奪い、しっかり試合を終わらせる。
ガンバは一試合平均2点奪うが失点も多く派手な打ち合いが多い印象。しかし現在の長谷川健太監督はリアリストな側面を感じ、実際堅い印象。前任の西野ガンバのイメージとも言える。
川崎もガンバ程ではないが派手である。
マリノスが塩試合が多いのは数値が教えてくれる。守備は固く、あまり得点も入らない。
ここから2014年の考察。
昨年、ガンバの三冠で幕を閉じたが強かった半面、運がよかったとも言える。理由は鹿島である。20年を通してぶっちぎりで強い鹿島が三冠を獲れたのはたった一回。ガンバはリーグ戦でいうとものすごい末脚で捲っての優勝である。ナビスコ、天皇杯は一発勝負なので運がものをいう。外野からみると宇佐美とパトリックで点を取り、守るという、浦和でいえばワシントン、ポンテのような感じ。
では実際にデータを確認しよう。
得点効率
これは得点効率のグラフ。1点取るまでの平均シュート数と総シュート数。緑は少ない方が良く、赤は多いほうが良い。
ガンバは得点効率がすこぶる良く、約6.5本シュート打てば1点取れる。そして得点効率が良い割にシュート数も多い。得点効率が良いチームはシュートが少なくなるケースが多い。リードすれば守りを固めるからである。
効率の悪さは新潟、甲府あたりに著しい。鹿島は「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」を地で行っている。
浦和はガンバと同数のシュートを放ちながら、効率は1本程度ガンバより悪い。
続いて平均得失点時間である。何分に一点取り、何分に一点失うのかだ。
平均得失点時間
ガンバは50分で得点し、100分で失点する。
鹿島は48分で得点できるが、78分で失点してしまう。
浦和は得点に60分掛かり、失点までに95分掛かる。
マリノスは失点までに105分、得点にも83分掛かる。兎に角、試合が動かない。
なお、ここまでのデータ考察で湘南や徳島や鳥栖などに言及していないのには理由がある。それはデータの少なさである。一年で降格した場合は数字は極めて悪い。サンプル数が少ないために極端に善し悪しが出る場合があり、それは統計的に見て排除するからだ。J1に定着し長年のデータを積み重ねると数値は平均回帰し平凡な数値になる。鹿島が凄いと言及する理由は平凡な数値になっていないことなのだ。
最後にミシャ体制での浦和、近年成功を収めた森保監督率いる広島、比較対象としての鹿島、ミシャのJ1通算成績の比較で締めよう。
ミシャ成績比較
若干広島のほうが良いが、浦和も03年からの通算成績よりも勝率、勝ち点とも良い。これだけ見れば広島はリーグを2連覇し、浦和が無冠なのは運がないとも言える。
ちなみに昇格後の08-11年ミシャ広島の成績はミシャのJ1通算成績とあまり変わらない。メンバーが変わっているため一概には言えないが、広島時代から浦和になり成績が良くなったミシャとミシャ広島を引き継いだ森保では、森保の方が“若干”良いだけなのだろうか?
皮肉で森保を引き抜けと言われるが、それが一番妥当なのが一番の皮肉だろう。
野球は確率のスポーツだ。どんなに打つ選手でも4割に届かない。もし4割打者が生まれたとしても100年に一度だろう。
サッカーも運に頼らず勝てるように戦術を練り練習を繰り返す。しかしボールは丸く、選手はミスをする。プロサッカー選手になること自体、運がいいはずだ。ただチームがタイトルを手にするのはもっと運が必要だ。技術を究めたアスリートが口にする「メンタル」や「気持ち」というのは「運」を掴むための方法なのかもしれない。
リーグより一足早くACLが開幕した。ゼロックスと合わせ3連敗。
今日2015年J1が開幕する。
運が必要だ。
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