アジアの壁、世界の壁 ジャッジのワールドスタンダード

ACLグループリーグ敗退は残念だったが、元はと言えば自分たちがコントロールできるチャンスがあるのにもかかわらず自らそのチャンスを握り損ねてしまったように思える。結果論として全北2試合が大きく響いてしまった。これは単純に力不足の可能性も否定できないが、久々のACL挑戦で今まで見えなかったものが見えた。これは、浦和というよりもJリーグのアジアにおけるプレゼンスを認識できたという意味で大きい。

はっきり言えば今回のグループリーグ内でアジャストしていないのは確実に浦和の方だった。何に対してかと言えば「審判」である。ただ、シンプルに審判のレベルの低さを嘆いてお茶を濁そうという訳ではない。この中に見出した希望は「当たり負け競り負けの少なさ」だ。ただ残念なことにこの強さが仇となってしまった。Jリーグでは正当なタックルやチャージと認められる基準がACLではことごとくファウルとジャッジされてしまった。これでは勝てる試合を勝てないも自明である。

Jリーグはここ数年で大きく変わった。それはジャッジの判定基準であるが、そのためにアジアの中で唯一「戦えるリーグ」でもある。激しさと速さ、強さが求められる。これは長年にかけ協会が再三審判に働きかけた結果、得られた貴重な財産である。「倒れたらファウル」という甘い判定を退けたため、アクチュアルプレーイングタイムの増加と審判を欺く行為の減少に大きく影響している。怪我が増える可能性もあるが、必要最低限の笛で観られる試合ほど面白いものはない。

この好影響の事例を挙げるに枚挙に暇がないが、敢えて挙げるとすれば海外移籍選手の活躍と実績であろう。世界で戦える選手を育成できるということだ。これはJのジャッジが世界基準に近い事への証左ともなる。代表の好成績の帰結も当然にここになる。具体例を示せばセレッソ大阪だ。香川は勿論、乾や清武もそうだ。香川に至ってはJ2時代に活躍しJ1わずか2か月でドルトムントに飛んだ。セレッソはリーグを代表するクラブではない。これは日本人選手の日本人的特性も影響しているからだろうが、国内トップクラブから海外トップクラブへの転身ではないところがリーグの特殊性(戦力の均一化)と駒の質だけでは勝てない厳しさを表している。大事なのは移籍した事実ではなく、即戦力として補強され活躍していることである。体格差のハンデをクリアし強みに変えられていることが重要である。これはクリーンで透明性の高いリーグ運営と質の高い試合を目指した結果得られたものだろう。

Jリーグはアジアの中でガラパゴス化したと言える。これは足踏みを続けるアジア諸国を尻目に世界と戦うためにワールドスタンダードを取り入れた結果だ。ヨーロッパに例えればJリーグはプレミアリーグのような状況だ。プレミアの判定基準がCLに適用されないように、Jの判定基準がACLに適用されない。しかし残念なのは大会の格式の差である。CLは世界最高峰のリーグであるが、ACLは名誉とクラブワールドカップの挑戦権のみである。プレミア勢にはCLにアジャストする意味があるが、J勢にACLにアジャストする意味があるかは疑問の域を出ない。当たられて大袈裟に倒れればよいのかも知れないが、倒れている間に世界に取り残されはしないか不安に駆られる。そうであれば日本のW杯の躍進や海外リーグでの日本人選手の活躍を携えて、日本のプレゼンスをアジアでより一層強める以外道はないのだろう。

浦和がACLに通用しなかったのは事実で、ジャッジの部分だけでなく実力不足であったのかも知れない。しかしACLがJリーグに通用しないのは明白で、それもジャッジだけでなく運営が脆弱で、賞金や環境面のみならず、規定や規則が曖昧なまま当該クラブのみに丸投げしている状態だ。歴史認識や政治などを大会に無駄に絡めたがるクラブや、対戦相手に対し(普通の)ホスピタリティも用意できないクラブに対して規定や罰則などを明示する必要がAFCにはある。日本からすれば中国や韓国には試合以外の対戦相手が多すぎるのだ。

JリーグにとってACLがアジアの壁であっても、アジアにとってはJリーグが世界の壁である。これはジャッジの話ではあるが時間が経てば言葉通りの意味になっていく。どちらに合わせるかは言わずもがなである。既にその差は如実に表れている。

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