ワーキングクラスのクラシック 鹿島対浦和

「闘え!」
もののけ姫のキャッチコピーよろしく
自分ならこの一戦のポスターにこんなコピーをつけてしまいそうだ。

ここまで激しいフィジカルコンタクトは
Jではこのカード以外ないんじゃないかと思う。
互いの意地がぶつかり合う様は
まるで旧ユーゴスラビア・リーグのような感じがする。
華やかさはないからクラシコよりクラシックが似合う伝統の一戦。


苦し紛れの引き分けにもみえるし
決して見栄えのいいサッカーでもなかった。
前半勢いで攻めきろうと急ぐ浦和と
自分たちのペースに持ち込もとする鹿島は
割に拮抗していた感じだったが、
セル→デスポトビッチの後半は
一気に鹿島にペースを握られる。
それでも耐える浦和に痺れを切らし
交代カードを切り出した鹿島は明らかに焦っていた。
途中交代の梅崎が何度か好機を演出したのもこの時間帯からだ。
結局はスコアレスドローとなったが面白い試合であった。

岩政が山村の誘い文句に「鹿島に来ればサッカーを知れる」と言ったらしいが
確かに鹿島には熟練された組織を感じる。
そのサッカーを知る鹿島が
サッカーを知らない浦和に何故勝てないのかと、
ペットボトルを蹴り上げるオリベイラの苛立ちと
終了後呆然とする岩政の表情は語っていたはずだ。
結局の所、崖っぷちに立たされた浦和の選手達のマインドと
サポーターが作るスタジアムの空気がそれに対抗した。
スポーツは突き詰めるとメンタルやマインドに行き着いてしまうのだ。
浦和の場合、組織プレーなどの細かいこと(実際は細かくはないのだが)
はさておき、一足飛びで取り敢えず一致団結してしまった感がある。

しかし嫌いではないのだ、
こんな戦いが。
切れそうなボールを必死に追う岡野が
僕らのヒーローであったように、
勝利こそ掴めなかったものの
今日戦った浦和の選手達は僕らの、
ワーキングクラス・ヒーローである。
カムバックした梅崎司、
足を吊りながら戦い抜いた小島秀仁、
そしてチームを叱咤し続けた柏木陽介。
そんな選手達はサッカー選手というより
フットボーラーという言葉がよく似合う。

泥臭くてもいい、
華麗じゃなくてもいい。
浦和の為献身する選手を万雷の拍手が迎えるだろう、
フットボーラー柏木陽介を。