フットボールネーションに近づく浦和の苦悩

浦和が末期症状に陥った。
愛媛に勝った試合後、ブーイングが起こったらしい。

今シーズンの浦和は混迷を続けている。

しかし、これは予想の範囲内である。
いつか起こりうる事態であり、
もう既に起こっていてもおかしくは無かったのだから。

そのきっかけはタイトルを逃した事である。
Jリーグも天皇杯もまだ可能性があるが、
ACLを落とした事で方向性を見失った。

そしてそれは幸福な事である。

ここ数年の浦和は常にタイトルを取ってきた。
しかもナビスコ、天皇杯、リーグ、ACLとステップアップしながら。
挑発的なサッカースタイルからリアリズムに変遷しながらも、
一貫してリスクマネージメントを意識し、
結果を残す事でメンタリティを培い、勝者になった。

この成功の裏に燻り続けていたアイデンティティーが、
これを正当化する為のタイトルを逃した事により焙り出された。

フットボールネーションには哲学があり、
それはナショナリズムやパトリオティズムと分ち難く結びついている。

愚直に勝負に拘る母国イングランド、
美しいサッカーを求めるスペイン、
負ける事を嫌うイタリア、
勝利を義務づけられるドイツ、
トータルフットボールの事を考えすぎて勝つ事を忘れたオランダ、
美しいパスサッカーに必要なのは勝利ではなく哲学であるフランス、
ブラジルへの畏敬の念と西へのコンプレックスを抱える東欧諸国。

いいサッカーで勝てれば最高だけれど、
それが無理ならば美しく散り去る、
桜とハラキリの・・・。

冒頭のブーイングは心の叫びである。
俺たちの浦和はどうなるのか?
浦和のサッカーとは何なのか?

今の浦和の臆病なサッカーは
観ている者のプライドを傷つけるだけだ。

浦和は理想を掲げサッカーをしなければならない。
そして最優先すべきはその哲学である。
浦和が浦和である為に必要な思想である。

クラブカラーがである様に、
サッカーもまたでなければならない。

それがあれば選手や監督などは些末な問題である。

重要なのは浦和というフットボールクラブなのだから。

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